第72話

13.嵐の前の大嵐






だいたいがまとまり一息ついたころ、稲垣さんが戻って来た







心なしか、顔が紅潮している・・・・??







僕と蓮伽さんと中居さんは顔を見合わせた






「皆さま、中抜けしまして申し訳ありませんでした。」





「稲垣、顔が赤いけどどうしたの??」





「え?そ、そうですか?いつもと変わりませんが・・・・」





目が泳いでいる感じもある





「それはそうと、感触はいかがでしたか?」






「あ、えと・・・」





僕はあからさまな違和感に一瞬動揺した






〈稲垣さん・・・フェ、フェロモンがすごい・・・・なんだこれ?〉





僕の違和感に蓮伽さんが気づく






「?!ちょ、ちょっとしっかりして!引っかかっちゃダメ!」



「引っかかるって、何!!」



「一回外出て!」





稲垣さんに近づくと強めのフワッとしたいい匂いがする





蓮伽さんも香りを嗅いだようだが、ものすごい嫌悪感を出している






「中居さん、稲垣さんにさっきのリスニング、共有しておいてください!ちょっと、外出るので!」






押し切られるように、部屋の表へ出た






「ちょっと!しっかりして!大丈夫?!」


「な、何!?」


「稲垣さんのまとっている香り、思い切り嗅いでいたでしょ!」


「な、なんでそんな事言うの!!」


「図星!!」





物凄い勢いで・・・・・怒ってる・・・・




蓮伽さん・・・ヤキモチ妬きなのかな・・・

般若のような顔して頭から煙が出る勢いだ




「そんなに妬かなくても・・・・」





「はァ??」




史上最強の冷たい「はァ?」、だ






これは、やばい、ぞ





「蓮伽さん・・・・・?」






「あれ、薬の匂いよ、しかも毒性が強い」





「え゛ぇ?香りを纏っているのは分かってたけど、まさか?」





「フェロモンに近い匂いで、キメセクに使うものだわ。あんなに強い匂い。誰が・・・」




「中居さんは?中居さんは大丈夫ですか?!」








蓮伽さんは少しクスっと笑って言った






「・・・・耐性がついているから、大丈夫よ(笑)」





「ん???」




「とりあえず中へ戻りましょうか?」








・・・・・・・







・・・・・・・







【ガチャッ、ガチャガチャ・・・・】







鍵がかかっている





「どうしたんですかね」



「中に入ればわかるわ・・・・中居さん開けて下さい!」






呼びかけると、鍵が開いた







なかに入ると、中居さんが稲垣さんを問い詰めている感じだった



稲垣さんはこの殺伐とした状況で、ヘラヘラしていた





〈完全にクロ、だな〉







「岩本さんはいつ気づいていたの?」



「先程。コテージに来た時にいつもと違う感じがしていて、すれ違った時の匂いと顔で。確証掴んだのはもう少し後ですけど」



「深澤さんは?」



「僕は、買い出しに行った時に。今まで、人とは距離を取って接して来る方だったのに、物凄いスキンシップが多いのと人工的な甘い匂いがしたので」






中居さんは怒りと悲しみが混ざった顔で、稲垣さんを見つめていた






中居さんはさっき入って来た時の顔つきと、強めの香りで分かったそうだ






「....そうですよね、中居さんしか知らない紅潮した顔・・・だったはず。稲垣さんに何が起こったのかしら」








「稲垣さん、あなたのその紅潮した顔、お相手は・・・・・香取さんよね?」






そばにいた中居さんの顔からは怒りが消え、悲しみだけが残っていた

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