第68話

買い出しの意味~深澤&稲垣side






僕は察しがついていた






多分、稲垣さんに関係あることで重大な話があるのだろうと








それを察することが出来るようになれただけでも嬉しかった









”蓮伽さんの助けになりたい”







いつも僕はそれだけを思っている









・・・・・・・





・・・・・・・






「・・・・・・深澤さん、色々とありがとうございます。」







稲垣さんは、泣きはらした目が腫れてしまって痛々しい






「いえ、僕なんかは何にもしてないです。蓮伽さんに比べたら。」








「・・・・深澤さんは本当に岩本さんのことを愛しているんですね。」


「、、、、はい。蓮伽さんはぼくのすべて、です。」


「すべて・・・・」


「はい、漆黒の世界に一人でいた僕を照らしてくれた温かい光。」


「光・・・・」


「ええ、ずっと欲しかったぬくもりで僕を包んでくれた、小悪魔です(笑)」


「・・・・・小悪魔....?」


「そうなんですよ(笑)ホントは悪魔ですけど・・」


「悪魔・・・・」







稲垣さんは何だかわからないという顔をしている







僕は笑いながら、愛情を含ませ





「そう、悪魔ですよ、彼女は。蓮伽さんという抜ける事の出来ない沼に溺れてしまった(笑)困ったことに本人は何の意識もない(笑)

彼女と出逢ってしまったせいで、蓮伽さんじゃないと何もかもダメになってしまった。」







目をまんまるくして、稲垣さんは僕を凝視していた






「・・・・・正直ですね、不安はないですか?自分の気持ちの方が大きい事とか、自分への気持ちの大きさとか、、、」







「・・・・・ないです。」







はっきりと声にした。





「最初から、僕の気持ちの方が大きくて当たり前で、それでもいいからです。」






「・・・・・」





「そして、愛し合う時には僕を欲し、僕だけの為に果ててくれる。それだけで十分満ち足りて幸せなんです。」





「深澤さん・・・・強いですね、そういう風に私は思えなくて、どうしても自分だけのものにしたくてあがいてしまう」






稲垣さんが苦しそうに見える・・・






「稲垣さんの感情は、好きならば当たり前の気持ちだから罪悪感は必要ないと思うんです、それに中居さんフリーじゃないですか?

僕は、一時期不倫だったので、蓮伽さんの娘さんにも申し訳なかったし、罪悪感でいっぱいでしたよ。嫉妬でどうにかなってしまいそうにもなったし。」


「嫉妬、あったんですね」


「そりゃ、ありましたよ」


「それでも、今の境地に行きついた理由は?」


「彼女に、蓮伽さんには敵わないからです」


「・・・・・・」





稲垣さんは黙って僕の次の一言を待っていた。





「最初から、対等じゃないと僕は思っています。蓮伽さんが聞いたらものすごく激怒すると思いますけど、

何もかもが吐出して蓮伽さんが素晴らしくて、やっている事も凄くて、そもそもの話、人として格が違う。

わかっていたけど一緒に過ごして更に納得しちゃったんですよ・・・というか降参に近いかな(笑)

嫉妬して、蓮伽さんを自分のものにしたいとか、おこがましいなって気づいたんです。

それに、蓮伽さんはちゃんと僕の所に来てくれた。あんなに凄い人なのに、僕の事を”いないとダメになるのは私の方”とまで。

もう、完堕ちですよ(笑)」






「・・・・・話を聞いていてわかったことが一つだけあります。」






「一つ・・・」





「はい、深澤さんは愛されていて私は愛されてはいない、という事、そこがダントツに違う所、ということです。」





語気には、淋しさとか嫉妬とか色々混ざっていた









―――――――――悲しい事だけど、それは僕も気づいていた





推測の域を出ないが、お互いへの熱量が違う感じがある




稲垣さんは身も心も焦がれているが、中居さんからは感じない

ってことは、中居さんは稲垣さんの気持ちを知っているのに今の関係を続けていることになる





〈蓮伽さんはさっきそれを言っていたのか〉




稲垣さんは納得をしている、とはいえ出来ている訳がないし、

中居さんは気持ちを利用しているふし・・がある





仕事では、上司と部下

プライベートでは一応付き合っている感じではあるが中居さんの感情が薄い







・・・・・・・・そうこうしているうちに、買い出し先のデパートに着いた







「着きましたので外商部へ行きましょう。」







車から降りると、稲垣さんは言った







〈外商・・・さすがだな〉








となりにいる稲垣さんから嗅ぎ覚えのある匂いが鼻をくすぐった







〈この匂い、どっかで昔嗅いだことあるな・・・いつだろう、何だっけな・・・・〉








そして、腕に腕を回して密着をしてきた







「?!」






「・・・・いっぱい話せて良かったです、私の気持ちは深澤さんならわかってくれるって思っています。」








静かに腕をはずした。









「・・・どうしました?僕では、稲垣さんの心の穴は埋められないですよ」







「・・・・・私、バイなんです」


「それが何か?」


「だから、深澤さん・・どうですか?お互いに穴を埋めるように満たしませんか?」








ヤバい、精神的に壊れかかってSEXに依存している可能性がある









「稲垣さん、これ以上自分を傷つけないで」







さりげなく腕をはずした







・・・・・・・




・・・・・・・





・・・・・・・何事もなかったかのように外商部についたので、中へ通されるまま入り


食材などを集め買い物を済ませた

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