第57話

「…はい…」














何の躊躇いもなく落とされた言葉に、はっとしてその顔を見ると。





亀寿はこの胸に頬を寄せて瞳を伏せ、その目からは美しい涙が零れ落ちていた。







それをぼんやりと見つめると、小さな声が聞こえる。















「例え今生で死に別れてしまったとしても…生まれ変わって…



また今日のようにお迎えに来てくださるのですか…?」

















その言葉に、泣きたいくらいの愛おしさが込み上げてくる。










 

『春に必ずお迎えに参ります。




だから…待っていてください』













私が堺で言ったその言葉を、貴女はただ信じて待ってくれていたのだと。







ずっと。






今日のこの日まで。





 






「…あぁ。もちろんだ。…必ず迎えに行く」










健気なその様が泣きたいくらいに愛しくて、堪らず抱き寄せてそう約束する。








死んでも守ってやると…心に誓って。















「だから…何度でも私と夫婦めおとになってくれるか?」














…………貴女の唯一になりたい。







何度、死に別れたとしても。



 




互いに唯一無二の…そんな『夫婦』になりたい。












ふと、腕の中で小さく聞こえた言葉にはっとする。













「……亀寿は幸せでございます…。久保様…っ」











こんな、縛り付けるだけの約束を。






幸せだと言ってくれる。







それがただ…幸せだと思った。







心から。










そっと頷いてその頭を撫でると、落とされた言葉に耳を疑った。

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