第49話
「…先の戦では皆に苦労をかけた。
島津宗家の家督を引き継ぐ者として心から礼を言う。
—————————ありがとう」
『ありがとう』
何よりもまず伝えたかったのは、島津の為に命を賭してくれた家臣の皆に贈る感謝の意。
それを託せるのは、この言葉しか私は知らないから。
ただ真っ直ぐに、伝える。
「そしてこれより精一杯務めて参る所存だが…私はまだ若輩故、力不足なことばがりで申し訳ないと思っている」
まだまだ青二才で未熟なこと、申し訳ないと思う。
…不甲斐ないと思う。
皆がいなければ、立ち行かないと思う。
私も…未熟な私が率いるこの島津も。
だから考えて、考え抜いた。
そんな私が皆にしてやれることは…
———————————やはりただひとつ。
「…だがこれだけは約束しよう。
今日この日より…皆のことは私が命に変えても守る。
…例え何があったとしても。」
————————守ることしか、できない。
大切な皆を。
この命に変えてでも。
何があっても…絶対に。
「だからどうか…私に力を貸してほしい。
そして共に島津を盛り立てていってほしい」
島津を守りし…龍になってみせよう。
この命を島津に捧げようと思う。
いつかの投げやりな理由ではなく…
———————————ただ守る、為に。
「————————よろしく頼むぞ」
そう決意と共に力強く言うと、家臣の誰よりも先に姫が美しい所作で私に頭を下げてくれる。
こんな私についてきてくれるのだと、ただ嬉しく思う。
「「はっ!!」」
今ここに。
島津の新たな時代がやってくる。
17代目島津宗家当主として…
この天命と宿命を全うすると。
家臣達の強い声を胸に刻み、そして時雨軍旗の重みを背に感じながら。
この命に強く誓った。
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