第17話

暫くの沈黙が続いたかと思うと、突然笑い声が上がった。 












「…やはり薩摩で会うた時から思っていたが、又一郎。お主、大したものだ。降伏した者は上辺だけの口上で皆平伏すばかりでな、わしにこのようにはっきりと物申す者はおらぬ」










その言葉に、顔を伏せたまま一瞬呆ける。







だけど理解して小さく苦笑いした。







…また、しくじったと。









すると持っていた扇子で顎を取られ、顔を上げさせられた。









「…うむ。…あの屈強な島津義弘の倅が、かように美しい男だとはの。やはり何度見ても信じられぬ。…面白い。だがわしは女にしか興味がないでな。…男にしておくのが惜しいのぅ」








別に自分の顔を美しいと思ったことはないが、その虫唾が走るような言葉に心から男でよかったと思う。







今だけは、男に生まれたことを感謝しよう。









「…お戯れを」








適当にそう吐き捨てて小さく微笑んでみせる。








すると顎から扇子を外された。








「…気に入ったぞ、島津の御曹司。…両人とも、しかとこの秀吉が預かろう。不便があれば何なりと申せ」









それに平伏して、悲観する。







やはり何をやっても、この色のない銀世界から逃れられはしないのかと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る