第15話

この男が私の領地のことなど、さして興味もなかったのが良くわかる。







…ある意味、有り難いと思うが。








そして秀吉はそのままそっと立ち上がると、扇子を手に持ったまま私の横を通り過ぎた。







背後で聞こえる、扇子がぱちぱちと鳴らされる音が心底耳障りだと思う。














「あの島津義久の娘、か…。なかなかに美しい娘だの。…悪うない」












その言葉に、取り繕えない程の不快感が芽生える。








島津にとって誰よりも高貴な姫に…心底汚らわしい、と。



 






きっと私とは違って、純粋に島津の為に思って女の身で堪えてこの場にいるのだと思うと。




   





お守りしなければと思った。













————————大切な我らの姫を。





 

























「————————その姫は」
























そこで言葉を一度切ると、己が何者かが頭に過る。








…不覚にも。

































「…その姫は、我ら島津宗家の大事な姫にございます。





—————————————お忘れなきよう」

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