第23話 帰り道のパラレルな世界

自宅の最寄り駅の一つ手前で何故か、降りていた。



すぐに、家に帰る気にはなれなかった。







月がとてもキレイで、少し冷たい風も心地よくて、

さっきまでの優しい時間を思い出す。









————眼鏡のレンズに映る照れくさそうな深澤くん。


————夜風にさらされた冷たくて大きな手。





公園での時間を思い出すと、胸がドキドキする。








心の奥がざわついていた。


片思いなんて、50手前の私にはくすぐったすぎる。


でも、この甘酸っぱい気持ちは心の奥の向こう側にある気がしていた。


必然のような、宿命のような・・・・


それに、あの香り。




(深澤くんが私に感じた香りと私が彼に感じた香り・・・・。

ボキャブラリー的には同じな感じするけど...)







”明日が来る”ということがこんなにも楽しみになるなんて・・・








ふと、目を閉じた。







?!・・・何これ!!

まただ!また、残像が入ってくる。






【あ...愛してる....このまま離れないで.....ん....

ァァ.......ッ.....もっと....も....っと......っ...ああァっ...】








?!

な、なに?今の!

わ、私、欲求不満!???

あんなの、今まで見たことなかったのに!







リアルすぎて苦しくなるくらいに胸が鼓動し、

体の底が疼いてしまうぐらいにはっきりとしている。






また、あの昔の時代の二人、だ。

あの重なりあった二人は誰なのだろうか・・・・






最近、残像のようなものが増えてきた。





まずい、気持ちが掻き乱れている。

・・・・もう一周して帰ろう。






自宅の周りをもう一周して、帰宅の途に就いた。

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