第22話 帰り際のいたずら

甘酸っぱい雰囲気の二人なはずなのに、無言だった。








色んなことを、お互いが感じすぎて、

会って間もないのに、私たちは二人にしかわからないことが起きている。







それは、いい意味でも、悪い意味でも。






そして、おおよその事が理解出来ているのが私だけだ。




(私たちは、一体何者なの・・・・??)

頭の中が中々整理がつかない。







深澤くんが口を開いた。


「あの.....」



「ん?」



「不思議な体験は初めてではないし、否定する方でもないのですが、

今日は、不思議過ぎて疲れてしまいました。」



「ふふっ....そうですね、私も。・・・でも、」



「でも?」



「ドキドキして、素敵な時間でした☆私には。」







深澤くんがの顔がほころんだ。



眼鏡に映った横顔に優しさが満ちているのがわかる。



「僕も、それは。あんな事、出来る性格じゃないのに・・・」



「あんなこと?」





眼鏡の横から、ちらっと私を見ている。



「・・・・口にはし兼ねますが(笑)」



恥ずかしそうに、口元が緩んだ。



「余裕そうですね、レンゲさんは。大人の女性なんだなって思ってしまう。」





(そんなこと、ないんだけど、な。)




「そう、大人の女性なのよ(笑)」






・・・思い出し恥ずかしくなったことは内緒にしておいた。






そうこうしていると、駅に着いてしまった。




夜の帳はおり、賑やかになっている。






(名残惜しいけど、帰らないと。母ちゃまに聞きたいこともあるし)





「では、ここで。今日はありがとうございました。」





「......僕は、名残り惜しいです。なんで、こんなにも名残惜しい・・・」


恥ずかしすぎて、食い気味に言葉を重ねた。


「(爆)明日、会えますよね??(笑)」




「・・・そうですけど、今日みたいに二人じゃない。じゃないですか。」


(か、可愛すぎるっ。こんなデカいのに・・・。)


「(笑)嬉しいな、そんな風に言ってくれるの。大人の女性に。」




「......レンゲさん、熟した方が女性は素敵なんですよ。」





そ、そんな事言われたら...今日は鼓動が持たない。



「あら、お上手なことで。ありがとうございます☆」



「あ、あしらった。」



「ふふっ。また、明日。深澤くん、ホントに今日はありがと。」



「レンゲさん・・・」




「ね、ちょっとかかんで。」





背の高い、深澤くんの耳元は少しだけ距離が遠い。




「???」

恥ずかしそうにかがんだ、深澤くんの耳元で呟いた。








『.....深澤くんのオーラは『あんず色』していたよ。とても、キラキラしていた。

見たことのない唯一無二の、優しくて温かい色だった。』






「!?え?ち、ちょっとレンゲさん?!」





「(笑)では、明日ね、深澤くん☆」






私は、足早に笑いながら改札を抜けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る