第六章 運命か宿命か

第21話 深紅色の魔法

.....静寂を繰り返す。






・・・・・


・・・・・




「あ、あの、レンゲさん。僕の事、いぶかしがらないんですか?」


「うん。」


「僕って、おかしいんじゃないですか?」


「ううん。」


「え、あの・・・教えて下さい、レンゲさん!!」




深澤くんは、少し声を荒げた。

普段は穏やかだが、明らかに動揺していて急いていた。



「あのね、深澤くん落ち着いて。多分、あなたの知りたい事を私は知っている。

そして、あなたも私に何かを感じて思い切って話した。違う?」






「そうです!そうなんです。レンゲさん、あなたを初めて見たとき、あなたは撫子色に輝いていて...」



「ん。....」



「え、と、そもそもですね、この仕事が決まったくらいから、いつにも増して僕は変だった。」



「変じゃない、だから大丈夫。」



「元から、霊感は強いのか、小さい頃から人が見えないものが見えてはいたのです。

でも、今回は特に、で。通勤経路を検索の為、就業する前に一度ここへ来ているのですが・・・・」



「が?」



「吸い込まれるように、この公園に来て、あそこの小さな森の部分の奥にある滝の方へと足を運びました。

そしたら、『私を見つけて....』と、頭の中に声が聞こえてきて.....。

温かくて優しい空気が僕を包んで....爽やかな香りが僕をくすぐったんです。」



「滝・・・?」



「今は暗くてわからないですけど、あの緑が小さく生い茂った先に湧き水程度の小さい滝があります。」



(初日に感じた水の空気はそれだったんだ・・・・。)



「あと、香り・・・って?」



「爽やかな、甘酸っぱい香りでした、そう・・・・」



「そう・・・?」



「さっき、言ったレンゲさんの香りと一緒で、”フルーティー、甘酸っぱい、爽やかな香り”」



「(笑)説明がわかりにくいな。ま、でも・・・臭くないなら良かった。(苦笑)」



「あの・・・今度その滝、一緒に見に行きたいのですがいいですか??」






「・・・・え?一緒に?!」


「え?ダメですか?」





・・・・ダメではないだろうけど、一人で行きたい。

まずは一人で行かないと、頭の整理がつかないだろうから。




「とりあえず、私、一人で行かせて、ゴメンなさい。」




「レンゲさん......」



彼は、怒られたワンちゃんのようにしょげてしまった。





「ごめんね。」

あまりにもしょげた顔が愛おしすぎて、のぞき込んでもう一度、あやまった。





・・・・ふと、目線があった。





.......





...........





彼の冷たくて大きな手が、私の頬を包んだ。






「.......レンゲさん...」






「.......深澤くん.....。」





(ああああぁ・・・もうどうしよう...このシチュエーション。鼓動が激しすぎてしまって、どんな顔、、、してるの、私。)





心臓が口から飛び出してしまいそうだったので、彼の手を包み返した。





・・・・・・その時だった。





頭の中に、鮮明に映像のようなものが流れ込んできた。

【愛してい..ま...す...きっと....きっと..生まれ変わって...、次の..世で...】

着物を着た女性と、若い男の子?が、騒がしい雑踏の中で繋いだ手を離されている......。








(えーーーーーーーーーーっ!な、な、な、何、今の。今の何?.....何ーーーーーーーーっ!)







私は、何が何だか分からなくなり、深澤くんの手をそっと頬から離した。





「はっ!レンゲさん...すいません....っ!」




深澤くんも、我に返ったのかびっくりして離れた。





「美味しかったサングリアのせい、かな(笑)」




恥ずかしそうに笑った私に、深澤くんはポソっと呟いた。




「僕、どうかしてますよね・・でも、あなたに触れたかった。」

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