第2話 心と体はうらはらに

日常に戻りながらも、心は少しずつ離れていっていたのかもしれない。





時間がたっても「あの日」の怒りは、何回も反すうをしていて、穏やかな日々はもう戻ってこなかった。

ちょっとしたことがあると、戻ってくる感情・・。




今、思えば、クリアな意志だった。心で綻んでゆく最初の少しの糸・・・。





そして、とある夜、それは起きた。





本調子ではなかった私は、早々に家事を終わらせて横になっていた。

隣にいたはずの娘はスヤスヤと寝息を立てながら、部屋の中をゴロゴロと移動中・・相変わらずの寝相の悪さである。

部屋の端っこに移動をし、日付が変わる頃に落ち着いていた。





ふと、背中に気配を感じた。嫌な予感がしたので寝たふりをした。






すると、パジャマの背中の部分がそっと上にあがった。冷たい風が背中に触れる。

手の感触が肌に触れ、胸を指先が這った。


一瞬、ゾワッとしたが、力を入れて息をひそめる。




「寝ています」の空気を出したが、判断を誤ったようだった。




旦那は、欲望を受け入れたと勘違いをしてしまい、手先が活発になり始めてしまった。





乳房の真ん中を捉え、強弱をつけながら摘み、弾きを繰り返す・・・

息遣いが激しくなってきたのを耳元に感じた。







不快、だ。





体調も万全ではなく、ましてや、愛情さえもなくなり始めているのに、致したくなどない。




でも、悲しいことに子宮は疼き、感じてしまっているのが自分でもわかった。下半身が潤いを帯びていく感覚に包まれる。

動物の性なのか、オンナのゴウなのか。

せめて声が出ないように、微動だにしないように、気づかれる事がないように・・ただただ時間が過ぎるのを待った。






こうなると、旦那の動きは派手になっていた。それでも遠慮がちに動いていた指先の動きが次第に大きくなり

胸へと伸ばしていた手は、下の方へと移動をし始めていた。






パジャマの中、下着へと早くも到着し、横から指を滑り込ませて蜜部の突起を捉えた。

息遣いが一気に激しくなり、呟く。

『イヤらしいな、寝ていてもこんなに大きく硬くして・・・。ヌルヌルしてるし』

とめどなく溢れてくる蜜で指の動きが早くなってしまった。





「ハァア・・んン・・ア・・ンっっ・・!」




感じないように、気づかれないように必死に声を殺した。






絶対に感じたくない。







幸い興奮してる旦那には、私の身悶える漏れてしまう声は届いてないようだ。

旦那のそれはお尻の丸みにあたり、最大限大きく充血しているようだった。






突起をすばやく上下していた動きがとまり、指が蜜をすくうようにして下着から離れた。

指を舐める音が耳もとで、した。







・・・・大好きな人なら、それも興奮し、交わることの淫靡なスパイスとなる。

二人で味わう、絶頂への非日常的な時間だ。







でも、今は違う。

一方的で、変態的で、苦痛だ。

躰が反応してしまうことに、悲しみさえある。

こんなに屈辱的な苦しい状況でも、溢れる事に嫌悪感を覚えた。




すると、パジャマのズボンと下着を一気に下ろし、そっと少しだけ足を広げた。





(・・・・・・・・・!?)





さすがに、振り返った。




「な・・にやってる・・の?体調が良くないのでやめて欲しいんだけど・・。」


「何言ってるんだよ、感じてるじゃん?指、見てみなよ。こんなにふやけちゃうし・・・ほら。」

そう言いながら、もう一度、蜜が溢れてしまった陰部に指を伸ばし、密をすくい、指先で摘まむように液体を伸ばした。


「ホントは欲しいんでしょ。」

さっきよりも足を派手に拡げ、大きくなったモノをグッと押し込んだ。





(や.....めてっ・・・・・・・・・。)





逃げるように前へズレたが、壁に阻まれて動けなくなってしまった。





「はぅ.......ツツ.....っ。気持ちいい........ッ、我慢してたんだから、させてよ。」

理性の無くなった旦那は激しく腰を動かし後ろから突き上げてくる。




力が抜けてしまった。

気持ちでは、嫌悪感を抱き拒絶しているのに、

躰が受け入れているのか、とめどもなく蜜が溢れて子宮の奥から波が押し寄せてしまう。






キスだけは避けたい。

それだけは・・それだけは・・











「.........はぅ....ン.......アアアッ...」

思わず漏れた声。

息遣いの荒くなる旦那。









下を向き声をこらえたおかげでキスを免れ、声も最小限で思い留めた。











涙がこぼれた。












色々なものが入りまじり、

気持ちが壊れそうに、グチャグチャになった。












律動が激しくなり、何度も突き上げてくる旦那。

心は苦しいのに、悲しいくらいに反応する私の躰・・・

抗うことに、疲れた私は旦那の律動を受け容れた。

屍のように。








一方的に旦那は絶頂を迎え、果てた。










・・・息が整ってきた状態で、近づいてきた。

「...気持ち良かったよ・・レンだって嫌がってたのにあんなに濡れて、気持ちよかったんでしょ。

口でして。って言わずに俺だって我慢してるんだよ、気を使ってさ。」












何かが音を立てて、弾けた。










「・・・触らないで....、気持ちよかったんならそれでいいでしょ........」

・・・自分でも驚くぐらいの冷たい温度で呟いた。









「・・・蓮伽・・」





布団を被った。

多分、少しの間旦那は座り惚けていたのだろう。

静寂が訪れた。

「レン.....あの..さ..」

言いかけたが、旦那は自分の布団に戻り、スッキリしたのかすぐに寝た。









しばらくして、静かにシャワーを浴びにいった。

電気もつけずにシャワーを浴びた。

声をあげて、むせび泣いた。

(もう、無理・・・)






・・・そして、ひとしきり泣いた後取りつかれたように全身を擦り洗い、鏡をみた。

自分と向き合い、心が決まった。







別れよう。

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