第一章 決定打となったもの

第1話 あの日を境に

ワタクシ、岩本蓮伽(イワモトレンカ)49歳。



もうすぐ・・・50。既婚者。娘1人、旦那1人。



結婚して、15年。

5.6年前から、離婚を意識し始めていた。





色々と理由を探せば思い当たることしかないけど、決定打がある。

インフルエンザにかかった夜の出来事と、乱暴な夜の営みを無理やりされた日の事。






少し、ひも解きたい。

旦那は、継続が苦手で、根性もなくて、コツコツ努力とか嫌いで、

気も短い。

2回ほど、警察のお世話になり前科がある。前科1犯だ。

だからといって、反社ほど大きな悪いことはできない。

優しい風や優しい時もあるけど、思いやりはない。

優しさも、タイミングと意味がズレる事もしばしば・・・

他にも、旦那を紹介するとただの悪口になるのでここまでにしておく。

もちろん、良いところもあるがしばらくその良いところを目にしていないので言葉にするのが難しい。

一旦、棚上げをしよう。





娘が小学1年の冬、インフルエンザを学校から我が家へ持ってきた。

人生で一度もかかったことないのに、かかってしまった。

熱が40度近いって・・なんならもう、ぬるめのお風呂の温度だ。

ずっと浸かってなどいられない。

しんどいのは熱ではなく、体の節々が痛かったことだ。





動けない。




ご飯の準備もできない。

独身なら食べない、という方法がある。

が、娘もいるし旦那も仕事から帰ってくるので気になる。

と、いうことで旦那に買ってきてもらおうと思い、

仕事から帰宅した旦那に夜ご飯をお願いした。





「準備できないので、買い物お願いしてもいいかな?」

「うん、いいよ。」



おーーー。珍しく、動いてくれるんだと気持ちが楽になった。






・・・がすぐに打ち砕かれる。





「具合悪いんだから、作るの簡単なものでいいよ。」







「え?」

あの・・・・インフルエンザなんですけど?






小1の娘ですらも、

「ママが作るの?????」

と言った。






「作れないから、なんか買ってきてほしんだけど・・・」

「あー、そういうコト?仕事から帰ってきたばかりなんだけど・・・・・

俺、どうするの?」




もう、気が遠くなりそうだった。






「・・・買ってくればいいよね。」

「あーーそうだね。帰ってくる前に連絡くれたら効率よかったのに」

と、吐き捨て気味に呟いた。





頭がクラクラしたが、さすがに怒る元気はなかったので押し黙った。

むしろ、血の気が引いて熱、下がるかもしれないとさえ思った。






娘を連れて、買い物へと出かけていった。




天井を見上げ、目を閉じた。

何が、間違ったんだろう・・・。










・・・・・・・1時間ほどしても帰ってこない。

連絡もない。





約2時間ほどがたった時だった。

静けさの中、電話がバイブレーションした。

けたたましい。






「・・・はい」

「あーレン?ごめんごめん。めんどくさかったから、ご飯食べに行っちゃったーーー。」




・・・・もう、言葉にならなかった。しかも、ほろ酔いである。




「いや、いいんだけど、いいんだけどさ、何?」


「そういえば、何食べるの?と思って。リョウがママ、昨日から何も食べてないだろうから、何か食べるもの、っていうから。」





・・・お前の意思じゃないのかい。・・・・どこまで、お前は。




「あ、そうね。喉が痛いので、通りやすく、食べやすいもので。」


一言言って、目を閉じた。

すると、間髪入れずに、

「どれくらいが通りやすいの?何が食べたいの?いくらくらいの?」

と、矢継ぎ早やに言葉を発した。




「あの・・・何でもいいよ。おかゆ作ってもらえたら・・」

「たぶん無理。」

食い気味に応える。




・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「じゃ、レトルトのシチューとかカップスープの素とかとパンを」

「どれがいいかわからないので写メ送るから、見て返事返して。」




もう言葉を返す気力もなかった。

「は・・い。」

とだけ返した。




結局、思い通りのものは買ってくることはなかったし、ほんのり酒臭い。






具合の悪い私の精神状態では、明日家族で笑っている自信がなかった。










この日は、永遠に「あの日」となり、脳裏に焼き付いた。

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