第10話

「伊織、」




碧を見ると、手のひらに何か持っている




「碧...?」




「こっち来て」



少し小高い丘に手を引く




上がっていくと、世界はまるで二人きりのようだった




星は降りそそぐように流れていく






「ありがとう、碧。こんなきれいな風景を」



「伊織、こっち向いて」


「?」


「僕と結婚してもらえませんか?」


「!!!碧?」




小箱をポケットから出し、開けた



「碧.....」



涙が溢れて来たけど、頬で凍って結晶化しそうだ。




指輪を薬指にはめようとしてくれているが

寒さでなのか、緊張なのかカタカタして上手く行かない



「碧、頑張って(笑)」



・・・・・・



「よし、OK」



左の薬指に高そうな指輪が収まった




「これ....高い(笑)」




「頑張ったよ、俺」



「ありがとう!」



思わず飛びつく




「伊織、俺、オーストラリア行こうと思う。着いてきて欲しいんだ。」


「碧....」


「今すぐじゃなくて、いい。伊織にも仕事があるだろ?キャリアを積んで来て、今、一番イイ状態だと思うんだ。わかってる、でも。」


「......でも?」


「俺、伊織じゃないとダメなんだ。他の女と付き合って気づいた、こんなに穏やかに過ごせるの伊織だからなんだって。」


「碧.....」


「他の誰かが伊織と一緒にいて、こんな気持ちになるの耐えられないんだ。俺のとなりに居て欲しいんだ」


「..........どうしようかな~」


「伊織?」




ちょっと、意地悪をしてみる。



碧は固唾を飲んで見守っている




「...........浮気は....浮気は即、離婚だからね。」


「伊織!OKってこと?」


「いつまでも一緒にいようね、碧!」







ETERNITYのミドルノートの香りは今日も碧の香りと優しく混ざり、私を包んでいた

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