玉響の桜〜愛し君へ〜前編

はる

表紙


—————これから毎年…



来年も再来年も…共に老いるまで




こうして一緒に桜を見よう





待ち侘びたこの春をずっと共に迎えよう——












はらはらと、盛りの桜が舞い散る。



それを見ながら彼は小さく微笑んだ。










————だが今は乱世



私は武家の名を背負う限り…

いつ死ぬかわからない—————









そう言ってゆっくりと開かれた彼の手から

桜の花弁が風に誘われて飛んでいく。




それを見送った彼は、優しい瞳で私を見た。


















——————例えこの命尽きようとも

私は永劫亀寿だけを想っている




だから何度死に別れても

またそなたと落花流水らっかりゅうすい夫婦めおととなり…



今日のこの日を迎えたい——————



 








この儚い戦国の世で私達は



桜舞い散る祝言の夜に

そんな永遠の約束を交わした。






※史実を元にしたフィクションです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る