第91話
「何二人で仲良しこよししてるの?」
私と語の間から、掠れた声が漏れた。
それからすぐに私達二人を纏めて抱き締める様にして綴の腕がぎゅっと、躰を包んだ。
おおよそ顔色が悪い私とは対照的に、溌剌とした表情で視線を片割れに持ち上げた相手からは、すっかり恐さが消えている。
「仲良しこよしじゃないよ、夜と恋人ごっこしてたの。」
「何それ。仲良しこよしよりもずっと狡いの。」
愉しそうに弾む会話の傍らで、ついさっきの語の言葉が頭から離れず激しい動悸を訴える胸をそっと抑える私。
「知らない塵に気安く話しかけられてしまうくらいなら、独りでお手洗いに行くの禁止にするからね」間違いなく語はそう言った。残念ながら聴き間違いではないだろう。
“知らない塵”その言葉が指す人間は、八神藤火しか心当たりがない。やはり、昨日の躾と称された罰は、私と彼が接触した事をこの双子に覚られたからだったのだ。
そうなると残る疑念は一つのみ。
どうして私と八神君が接触した現場に居合わせなかった語が、その事実を把握していたのか。
「…ん。……ちゃん。」
一番重要であるはずの答えが、私の脳みそでは導き出せない。
「夜ちゃん。」
「きゃっ。」
強く肩が引き寄せられた衝撃で、漸くハッと我に返った。
それと同時に視界に入ったのは、眠い目を擦ってふにゃりと頬を緩める綴の貌。
「ぼーっとして、まだ眠たいの?」
顎を持ち上げられて、当然のように接吻が落とされる。
「それとも、昨日沢山愛されて疲れちゃった?」
唇に残った熱は語のそれと同じで、ジリジリと私の全身を焼いていく様だった。
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