第88話
いくら双子でも末っ子だからなのか、綴よりも語の方が甘えただし、我が儘だ。
彼は私が容易に二人を識別できる事が普通じゃないし、罪だと云っていたけれど、やはり同じ貌をしていても微々たる性格の違いはちゃんとある。
「あ!折角ならソファに座って食べよう。」
「え、何で。」
「二人くっ付いて食べるの。恋人ごっこ!」
こうして突拍子もない提案をするのだって、とても語らしい。
綴が自発的に何かをしようと誘ってくる事は、殆どない。
名案だと云わんばかりの表情を浮かべて私の元へと駆け寄った相手が、ひょいと軽々私の躰を抱き上げた。
「わ、分かったから。自分で行くよ。」
「ふふっ、駄目。だって夜、躰痛いでしょう?」
「……。」
「今だけは僕は夜の恋人だから、労わらせて欲しいの。」
強引なところは、綴とそっくり。
図星を突かれ、返す言葉が見つからなかった私は黙って語にソファへと運ばれた。
ふかふかで柔らかいソファが全身を包み込んでくれるおかげで、心持ち痛みが和らいだ。
隣に密着して座った語は、何が愉しいのか頬をしきりに緩めている。
「良いお天気だね。」
「そうだね。」
「僕ね、晴れの日が好きなの。だってね、夜と初めて逢った日のお天気と一緒だから。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます