第84話
「夜は罪な人だね。」
「どう云う事。」
「そのままなの。」
幾分私より身長が高い癖に、屈んで胸に顔を埋めるこの男の仕草は時々幼子の様に映る。
「僕達を見た目だけで判別するだけじゃなくって、声を聴いただけでもすぐに誰なのか当てちゃうでしょう?」
「そんなの普通だよ。」
「僕達にとっては普通じゃないの。」
一瞬だけ目を伏せた相手が哀愁を孕んだ表情を見せたのは、私の見間違いだろうか。
またすぐに貌を綻ばせた語が、胸まで伸びた私の毛先を摘まんで口付けをしている。
「双子である僕達を別々の人間として扱ってくれたのは、夜とお祖父様だけ。」
何故そこに彼等をこの世に誕生させたはずの両親が含まれていないのだろう。そんな疑問を抱かない事もないが、私の知る限りでは、この二人が両親と話をしている場面に遭遇した事が一度もない。
そもそも、彼等の両親の顔すら拝見した事がないのだ。
もしかすると私の知らない所で両親と面会しているだけなのかもしれないけれど、少なくとも、この双子と両親の関係はとても良好と云える雰囲気ではない。
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