第75話

私の掌から欲望を引き抜いた綴が、口許を持ち上げてニヒルな貌をしている。



「挿入りそう?」


「んー、少し夜が苦しいかなぁ。でもとってもグチョグチョ鳴っているから大丈夫そうなの。」


「そう、夜ちゃんが苦しいなら丁度良いや。」



この会話をただ聴く事しかできない身にもなって欲しい。


着実に拷問が近づいている事と未知の恐怖に、ハンカチを咥えている唇が震え歯がカチカチと意図せず衝突する音が立つ。




「だってこれは夜ちゃんの躾だもの。」



目前にいた綴が跨っている位置を下降させながら、私を視線で刺し殺す。



閻魔大王よりも、悪魔よりも、私はこの男が恐ろしくて堪らない。


この双子が、忌まわしくて仕方ない。




「わーい、二人で一緒に挿入るのは初めてなの。」


「そうだね。」


「夜が壊れちゃったらどうしよう。」



瞳の虹彩が捉えたのは、同じ表情を湛えた同じ貌。



どうしよう。


恐い。


苦しい。


辛い。




負の感情だけが渦巻くこちらの胸中などお構いなしに、麗しい双子は仲良く声を揃える。






「「でも壊れた方がお家に閉じ込められて都合が良いの。」」



ほらね、何時だって、私の希望をこの二人はことごとく踏み躙ってしまうんだ。

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