第73話

絶望の快楽への逃げ道であった声も奪われた。


残るは、この地獄が終わるのを待つだけとなってしまった。




「さっきこの場所での淫行を心配していたけれど、平気なの。」


「………。」


「だってこのフロアは、僕達の家しかないんだから。」



そう云う問題じゃない。


使用人の誰かが用があって訪れたらどうするつもりなのだ。




「ふふっ、使用人共には見せしめるだけだよ。夜ちゃんは僕達だけの物ですってね。」



吊り上げた口角に、微量の血液が付着している。


それは間違いなく、私を噛んだ折に飛沫した物だった。




「ねぇ綴も一緒に挿入いれようよ。」




依然として欲望のままに腰を打ち付ける語が出した提案に、血の気が引く。



何を考えているんだ。


一体どうするつもりなんだ。



大方予想は付くけれど、そうであって欲しくない想いが強い余りに頭が真っ白になる。


情事が原因でない汗が、さっきからずっと異常に滴り落ちていた。




「僕だけだと寂しいの。だから綴も来て?」


「仕方ない弟だね。」



フッと鼻から息を出して悪戯な顔をした綴が、ボトムスを下げて自らの熱で膨らんだ存在を露わにした。

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