第72話

躰の至る所を開発したこの双子にかかれば、私の性感帯をピンポイントに刺激する事など造作もない。



悪意しか感じない責め方に弓なりに躰がしなり、痙攣を繰り返す。


それから喘ぎ声にもならない息だけが空間へと消えていく。




「だらしがないよ夜ちゃん、これじゃあまるで発情期を迎えた猫と何ら変わらないじゃない。ほら、お口を塞いであげるね。」



ジャケットの胸ポケットから取り出したエルメスのハンカチで、細長い簡易的な縄を完成させた綴によって鼻と口とを押さえつけられる。


ただでさえ、エンドレスの絶望に体力を消耗しているというのに、ここに来て呼吸の手段全てを奪われた。




苦しい。


苦しい。


苦しい。



このままだと、確実に死ぬ。




じたばたと反射的に藻掻く肢体を、拘束したのは語で。


それだけじゃ飽き足らない語は、意図的に律動の速度を突如上げた。




「っっ…っっっ!!!!」



もう駄目だ、窒息する。


その思考が過ったのを完璧に見計らった綴が、私の呼吸器を解放した。




「ハァ…ハァ…ハァ…うぐっ…。」



自由なんて、与えて貰えるはずがない。


私が呼吸を取り込んだ隙に口の中へエルメスのハンカチが押し込まれ、猿轡に拘束されたのと同様な痴態へと成り果てた。




「よーく似合っているよ。」



コテンと小首を横へ折ったこの男は、最初からこれをするのが目的だったのだ。

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