第71話

いよいよ始まった地獄に、絶望の蕾が花開く。


高い天井が、雲の浮く空の様に果てしなく遠く感じてならない。



誰もいないのに助けを求めて力なく伸ばされた己の手が、虚しく空気だけを掴んで床へと力尽きる。





クチュリ


クチュッ…クチュッ…グチュ



語の腰が深く沈み、奥を貫く度に一々鳴る水気を孕んだ音は、まるで絶望の快楽に悦んでいるみたいだ。


そんな自分に吐き気を催す。屈辱と傷ついた自尊心で胃の中がムカムカして仕方ない。




「ふぁっ…あん…あんっ…。」


「そんなに気持ち良い?ねぇ、そんなに気持ち良いの?」




キスマークの度を過ぎた鬱血痕で、確実に私の白い肌を埋めていく綴がちらりと一瞥して厭味しか含んでいない質問を投下する。




最低だ。


最悪だ。



家の中にも入っていないこんなエレベーターを出たばかりの地面で、落下しているチューベローズの花弁と同様に伏してる私。


その様を偉く幸せそうに見ている綴に、胸糞が悪くなる。




「僕達の手でここまで堕ちた感想はどう?夜ちゃん。」



耳元に舌を這わせ、熱烈な接吻の後に囁いた綴に喉まで沸き上がる反抗心を呑み込んだ。




「死んだ方がマシ」そう答えられる勇気を、弱者で奴隷の私は欠いている。

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