第57話

正直に打ち明けると、私は自分の目が肥えている自信があった。


言わずもがな、絶えずあの双子の貌を見る事のできる環境にあるからだ。



性格や精神面のひずみは置いておくとして、綴と語の貌立ちは、十人が目ても十人が「綺麗だ」と謳うに違いない美しさを有している。


実際、初めて彼等と接触した折、私は二人の纏う唯一無二の優艶さに見惚れたし、これまでも彼等に心奪われる大量の人をこの目で捉えてきた。



最早藝術品の類にすら思える彼等だけれど、今私と対峙しているこの人も綴と語に負けずとも劣らない容姿をしている。



あの二人に匹敵する外見の人間がいるなんて…。


それも、芸能人とかでもなく大学に生徒としているなんて…。



驚嘆の声しか漏れそうにない。




「ボーっとしてるけど、本当に大丈夫?」



困った様に眉を下げ、苦笑いを零した彼の言葉で漸く私は我に返った。




「えっと…大丈夫です。本当に、ごめんなさい。」


「ううん、寧ろ幸運だなって実は思ってたんだ。」


「こ、幸運?」




聴き間違いだろうか。


そう案じて聞き返したけれど、正面で佇む彼は満面の笑みで首肯したのだった。

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