第52話

こんな様子では、私に「友達」と云う存在が出来る日は来ないのだろう。



綴と語以外の人間関係を一切遮断されているせいで、学校を愉しいなどと思った事もない。



如何なる時でも窮屈で、息苦しい。それが私の人生だ。


それに、誰かと人間関係を構築する以前にこうして意図せず敵を作り忌み厭われている私には、友達を作るなんて事は夢のまた夢だ。




「大学ならもしかしたら…なんて、期待した私が愚かだった。」



不動財閥の名と、富と、権力は、幼稚舎から同じだった学友以外にも大きな影響を与えている。


それ程までに、この双子は優れた家柄のご子息なのだ。



彼等に太刀打ちできる力も術も、私は有していない。現実なんてそう云う物だ。


もう慣れている。この世は所詮、辟易する位に理不尽塗れだ。



そして私は、その理不尽の端にいる見えるか見えないか程度の犠牲者に過ぎない。




「夜。」



教授でもなく、ホワイトボードでもなく、ただただ遠くに視線を伸ばしていた私は、シャツの袖を引っ張られた隣へと意識を奪われた。



そこにあったのは、悪事を働く前に見せる妖艶な語の笑みだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る