第45話

三つ目の箱が、双子の手によって開けられる。


その中にあったのは、煌めきを放つ美しい三つの指環だった。




「え…これ……。」



驚嘆の声を漏らしたのは、勿論私。


どうして吃驚したのか。そんなの、箱に収められている指環のデザインがまるでエンゲージリングの様だったからだ。




「驚いた?僕と語がデザインをしたの。」


「ふふっ、僕達がずっとずっと永遠に一緒だっていう証なの。」




二人の指が、一番小さな指環を摘まみ取った。


何の相談も話し合いもしていないのに、心も思想もシンクロしている彼等の仕草。



太陽の光が指環に当たって、一層美しく輝いている。


唖然としている私の左手を二人が攫い、薬指に指環が通される。



その儀式は、本物の結婚式の様に思えた。



軽いはずの指環が、とても重くて仕方ない。自分を縛り付けている証が具現化してしまった事に嫌悪感を募らせずにはいられなかった。




「夜ちゃんも、僕達の指に指環を通さなきゃ。」


「そうだよ、早くして欲しいの。」



横に並ぶ同じ美しい貌。


差し出された二本の左手。



彼等の命令に、愛玩動物である私が逆らう権利などある訳がない。

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