第44話

「これはね、僕達の新しい門出をお祝いする物なんだよ。」



はしゃいでいる語から察するに、兎に角心待ちにしていた物らしかった。



しかしながらやはりピンと来るものがない私は、首を捻るだけ。


唯一分かる事は、綴の持っている箱にあるハイブランドのロゴがアクセサリーを手掛ける事で有名な事くらいだ。




「それじゃあ開けるよ。」



語に引けを取らないまでにはしゃいでいる綴が、カッターナイフで箱の封を切る。



開け放たれたそこから、丁寧に包装されている箱が現れた。


何だかマトリョーシカみたい。そう思いながら、姿を見せた一回り小さい箱を眺めていた。



リボンが解かれ、包装紙が剥ぎ取られると、また小さな箱が顔を見せる。


けれどそれは、今までの箱とは明らかに質感が異なっていた。



「やっとなの!」


「僕達、これだけを首を長くして待っていたよね。」



たかが箱から箱を取り出し包装紙を剥ぐだけの工程でも、この双子は一々共同作業で行っている。


もう癖なのだろう。綴と語はずっとこうして、小さな事から大きな事まで、全て二人で共有して分かち合っていた。



そして必然ながら、私もほとんどの事を彼等と共有していた。

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