第46話

指先まで瓜二つの彼等。


細い線の華奢な左手薬指に輝くのは、私と同じ指環だった。




「嬉しい、幸せ。」


「僕も同じ気持ち。夜も同じ気持ちだよね?」



目に見えない威圧によって業務的に通した指環だと云うのに、私が自ら贈り物をしたのかと錯覚するくらい二人は歓喜に満ちていた。


四つの瞳に刺された私は、本心とは裏腹に小さく頷いた。




こんな呪縛の印なんて、恐ろしくて憎いだけなのに。


そんな胸中の言葉は、口が裂けても吐露する事なんてできやしない。




「本当はね、三人でお揃いの刺青いれずみを刻みたいねって話していたの。」



恍惚と指環を眺めていた綴から明かされた内容に、ゾッとしたのは恐らく私だけだ。




「けれどまだ十八だからいけないって、お祖父様に云われたから仕方なく指環にしたんだよ。」



続けて語によって事の顛末を告げられ、思わず安堵の息が小さく漏れた。


刺青なんて絶対に厭だ。そんなの、私が二人の奴隷であったと云う証に過ぎない。私が惨めで愚かな人生を歩んできた証にしかなり得ない。




免れた最悪の事態を聴いて、小刻みに震える私に気づかない両者は仲良く口を揃えた。



「「いつか必ず、お揃いの永遠の証を刻もうね。」」

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