第42話
彼等と生活を共にして十五年。
二人の間にこんなにも不穏な空気が流れたのを目撃するのは初めての事で、内心困惑した。
♪~♪~♪
息をするのすら憚られる重圧な空気を割いたのは、鳴り響いたインターホンの音だった。
「僕が出るよ。」
弟の舌に愛撫されていた手を下げて、ベッドから降り立ち寝室を辞した彼の姿が消えた途端。
語の視線の矛先は再び私へと舞い戻った。
「僕もね、夜を愛しているの。」
ついさっきまで綴の指に這わされていた舌が、今度は私の頬を撫でる。
「だから抜け駆けだけは絶対に許さないんだぁ。」
“それが喩え綴であってもね”
鼓膜を突いた相手の声は、やはり低くて温度がない。
私の鼻腔を擽った香りは今日も、綴とも私とも違うそれだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます