第41話

依然として絶頂の熱が残る躰に、語が跨った。



「そう云う割には、“大変にお愉しみをした後”って顔をしてるけどね。」



擦った目で私を捉えた相手が、氷みたいに冷たい表情を浮かべている。


どんな表情をしていても麗しい彼の貌が、ぐっと唐突に距離を埋めた。



私の頬に掛かるのは、語の吐息。


嘘を暴くつもりだと云わんばかりに凝視する相手に、居た堪れない心持ちになって視線を僅かに逸らした。




「今回だけは僕が馬鹿になってあげる。」



透き通る双眸を滑らせた彼が次に映したのは、自らの片割れ。


平静を装っている綴を鼻で嘲った語は、首を横に折り曲げて開口する。



「綴の嘘に騙された振りをしてあげるよ、だけど覚えていて欲しいの。」



私の情欲に塗れた綴の手を取った男は、挑発する様な目線を向けたまま自らの口腔内へと光沢を帯びた指を導いた。


双子の兄の指へと丁寧に舌を這わせるその光景は、実に歪で狂っていた。




「抜け駆けして夜を自分の物にしようなんて企んでいるとしたら、僕は綴でも容赦はしないよ。」



それでも艶やかに見えるのは、やはり彼等二人の容姿や纏っている雰囲気が優美で雅だからなのだろう。

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