第貳章

第40話

ドキリと心臓を一突きされた感覚に襲われる。


背筋が凍って息を呑んだのは、私だけだった。



恐る恐る上昇させた視界に飛び込むのは、余裕綽々とした笑みを携えて語を見つめている綴の貌。



「起きたの語?おはよう。」


「おはようじゃない。僕の言葉聴いてなかったの?綴。」


「勿論聴いていたよ。勘違いしないで、僕達は語を意図的に仲間外れにした訳じゃないよ。そんな狡い事する訳ないでしょ。」



ね?夜ちゃん?そう綴が私へと話を振る。


寝ている語の傍でする淫行に背徳感を覚えて興奮していた癖に。私を独り占めできると嬉々として語っていた癖に。そんな事これっぽっちも想っていなかった風を完璧に繕っている。



異常に仲が良くて、互いの間に秘密を作らない二人のはずなのに。


綴が平然と嘘を吐いた事に私は内心とても驚いたけれど、ここは話を合わせるのが先決だとすぐに考えて首肯しゅこうした。




「ふーーーーーん。」



全然納得のいっていなさそうな語を余所に、私の下着から綴の手が引き抜かれる。


遮光カーテンの僅かな隙間から射す太陽のせいで、私の欲情に塗れた相手の手が光沢を放っていた。

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