第33話

綴と語の場合、「美人」と云うよりも「藝術品」に近いのだと思う。


幾度鑑賞しても美しい絵画には飽きが来ないのと同じ感覚だ。



「三人だけって、慣れない。」



当然の様に一つしか設けられていない寝室で、独り言をポツリと漏らす。


不動の屋敷では、陽が昇るよりもずっと早くから色んな人が動いている音が微かながらに聴こえていた。



けれど、三人きりで迎える朝は大変に閑静だ。




「そう?僕はもう慣れたよ。」



耳元で、悪戯に言葉を囁かれた。


天井を見つめていた視線が滑って伸びる。



「珍しい、起きてたの?」


「うん、眠いけどね。」



大きく欠伸をしながら頷いた綴は、ぐっと私の腰を引き寄せた。



「眠いなら眠ったら?今日土曜日だよ。」


「ううん、起きる。」


「……。」


「だって、夜ちゃんを独り占めできる絶好の機会だもの。」



相手の口角が上昇して、頬に靨が出来上がる。


靨の浮く位置すらも二人揃って全く同じなんだよなぁ。ふと、そんな事を思っていた隙を突かれ、綴がペロリと私の唇を舐めた。

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