第32話

翌日、土曜日にも関わらず朝早くから目が醒めた。


朝に滅法弱い彼等は、私以外の人間に起こされるとその日一日の機嫌が最高に悪くなってしまう。


屋敷に住んでいた頃、それを知らないで彼等を起こしてしまった新人の使用人や執事が泣かされていた場面に幾度となく遭遇した事がある。



腫れ物なんて生易しい扱いでは済まないこの双子には、誰もがお手上げ状態だった。


その惨憺たる光景を見る度に心苦しくなった私が捻出した打開策が、誰よりも早く目覚めて二人を起こすと云う物だった。



だからこうして曜日関係なく早い時間に起床するのは、すっかり躰に染み付いてしまった癖の一つだ。


それは三人きりでの生活になっても、決して変わらない。




「…天使みたい。」



鎖の様に躰に絡みついてる華奢な腕や脚。


私を抱き枕にして夢の中にいる彼等の寝貌は、本当に怖いくらい美しい。



美人は三日で飽きるだなんて言葉があるけれど、十五年一緒にいる今でも私は二人の寝貌に魅了されるし、心惹かれてしまう。

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