第26話
テーブルに並んだ大きなピザが五枚。これが今夜の食事な訳だが、どう考えても人数とピザの量が合致していない。
コーラが注がれたシャンパングラスは丁度三つ。
綴と語が対面する形で着席して、二人の間に私の席がある。この座り方は幼い頃から一度も変わった事はない。
大学入学を機に大きく一変した事は、使用人や執事が住み込みでいた不動財閥の大きな屋敷から引っ越して、私達三人だけでマンションの一室に住む様になった事だ。
綴と語の強い希望だったらしい。
三人だけで生活する許可を捥ぎ取る替わりに、きちんと大学に通い卒業すると云う交換条件を彼等と彼等の祖父の間で密かに交わされていたと知ったのは、屋敷を引っ越す前日だった。
長年住んだ不動の屋敷を離れ、ここで三人のみの生活を営み始めて一週間。
私からすればただでさえ日常に蔓延していた陰鬱さが、色濃くなっただけにしか思えないけれど。
どうやら彼等からすると刺激的で、新鮮で、愉快な物らしい。
「これがピザと云う食べ物なんだね。」
「映画で観たまんまなの。」
使用人も、お抱えのシェフも、教育係も、執事もいない環境に突然解き放たれたからだろうか、この双子は専ら「庶民ごっこ」に嵌っている。
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