第15話

綴の手首に顎を載せて、小首を傾げる語が私の顔を伺っている。



「夜、綴が怒ってるの。」


「知ってる。」



何を今更改めて、そんな厄介な現実を突きつける必要があるのだろうか。


絞め付けられている首筋に唇で触れた相手は、私の耳たぶを無遠慮に噛んで痛覚を刺激した。




「云っておくけど、僕も怒ってるから。」



一瞬にして温度の消えた冷たい声が耳元で消える。


その刹那、私の肌には厭な汗がジワリと浮いた。




「そもそも夜ちゃんは、大学なんて行かなくたって良いんだよ。夜ちゃんは永久に僕達の物なんだから、就職して馬鹿みたいに労働する必要もないでしょう。」


「そうなの、夜はずっと僕と綴の物なの。」



ほんの十五分先に産まれたらしい兄の言葉に賛同する様に、首を縦に振っている語と視線が絡む。


二人の口から当然みたいに告げられる言葉に、顔を顰めそうになった。




永久?ずっと?笑わせないで欲しい。


この気分屋で飽き性な双子のどちらか片方が「要らない」と思った瞬間、私は塵箱に捨てられる。


何時か必ず来るであろうその日を待つ事しかできない恐怖を、この両者は露程にも知らないのだろう。

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