第14話
とんだとばっちりだ。
そんな不満を覚えるのは、とうの昔に忘れてしまった。
「不愉快な会話を聴いてしまったから、僕とてもご機嫌斜めなの。」
斜めどころじゃない。
相手がかなり不機嫌な事くらい、火を見るよりも明らかだ。もう十五年も一緒にいるのだ。それ位は手に取る様に分かる。
「夜ちゃんが可愛い?当たり前だよね。本来ならあんな連中の眼中にすら入る事のできない子なのに、毎年毎年どうしてこんなにも身の丈を知らない屑が湧き出てくるのかなぁ。全く、呪い殺してしまいたくなっちゃうよ。」
長い睫毛に縁取られた綴の目が細められる。
彼の瞳に映る私の表情は、自分でも奇妙だと思わずにはいられない程に無感情だった。
「だから夜ちゃんが大学に行く事を僕は阻止したかったの。」
「仕方ないの、夜の大学卒業はお祖父様の命令なんだもん。」
仕方ないの。もう一度その言葉を繰り返して不貞腐れた表情をする語が、私の隣に腰を下ろした。
「あーあ、僕と綴が大学生になったら夜を僕達の物だけにできると思ってたの。それなのに、夜まで大学に行く事になるなんて計算外なの。」
「あの
クスクスと声を漏らす綴の恐ろしさは、その発言に冗談が僅かにも含まれていないところだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます