第13話
視線の先に並んだ二つの貌。
彼らの貌は、相変わらず酷く優艶でそれでいて瓜二つだ。
未だに一番好きらしいおやつの時間を途中放棄してまで、綴の隣に並んだ彼も又、偽りの笑みを携えていた。
「僕達が懸念していた事が早速起こっちゃったの。まだ講義すらない入学式なのにね。皆が夜ちゃんに釘付けだったの。」
「そんな事な…「煩いよ。」」
正面から伸びて来た手に首筋を捕らわれた衝動で、背中が深くソファに沈む。
私の細やかな反論は妨げられ、首を掴んでいる相手の華奢な手首には薄っすらと血管が浮いている。
「そんな事あるの。」
「………。」
「あるかないかは、僕達が決める事なの。夜ちゃんが判断する事じゃあない。」
厄介な事になった。そう思った。
こうなる事のない様に一応気を付けていたつもりだったけれど、たった一人で警戒できる範囲なんてたかが知れている。
私の警戒範囲外で、尚且つ綴の警戒範囲内で起きてしまったらしい最も危惧していた出来事。
よりにもよってどうして綴の耳に入ってしまったのだろうか。
変な噂話を立てていたらしい顔も知らない人間に対し、恨みが募るのも仕方がない。
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