第12話

「片想い拗らせて笑顔振り撒いていい人ぶるよりは、思い切りぶつかって玉砕したほうが気持ちにケリがついて切り替えられるだろ」


「――そんなの、無理に決まってるよ」



そう強めに言うと、テーブルに肘をついて私の顔を覗き込むように屈んで近づいてくる羽村。

いつもより近くて、少しだけ肩に力が入る。



「そうやって何年ウジウジしてんだよ。いい加減前向いてもっと視野広げろよ」



いつも適当に茶化して慰める羽村が、今までとは違う強気な言葉で私に向かって言い放つ。



その態度と言葉が胸に突き刺さり、なにも言葉が出てこない。



すると、近くに寄った羽村がさらに近づいてくる。



「お前があいつばっか見てるせいで、見向きもしてもらえない男がいることも覚えとけよ」



そう言うと私の頭をワシワシ撫でると、そのままカフェを出ていってしまった。



私は一瞬何を言われたのか分からず、去っていく羽村の後ろ姿を眺めながら自分の頭を擦る。



「どういう、こと……?」



なぜ羽村が不機嫌に去っていったのか、安達と真嶋さんの婚約で涙が出るはずが、羽村の態度の方が理解できなくて、おかげで涙も引っ込んでしまった。

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