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第13話

数日間、羽村に言われたことを考えていた。



友人として同期として何も言わずにいるほうが傷つかずに安心して過ごせる。



けれど、言わなければ何年もウジウジとした執着を解消することができず、きっとこれから先も膿のように心の奥に固まったままになる。



分かってるけど、このままでいい現状のままで……という臆病な自分がいてどうしても踏み出せない。



『見向きもしてもらえない男がいることも覚えとけよ』



羽村の言葉が本当なら、誰かが私を見ていてくれてるんだろうか……。




何も進まないまま、時間だけが過ぎていく。

羽村とはあれ以来顔を合わせていない。



お互い連絡を取り合ってないだけなのに、いつも冗談でも慰めて励ましてくれていた人がいないと思うと寂しく感じる。



それほどに、羽村は私にとってかけがえのない友人になっていたんだと気が付いた。



今度連絡を入れてみよう。そして、ごめんねと言ってみよう。



そんなことを思いながら見積書片手に廊下を歩いていると、前方から安達が歩いてきた。

ほんの少し、ドキッと胸が震える。

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