第10話

私がカフェに着くと、すでに羽村は席に座って待っていた。



「ごめん、急に呼び出して」


「いや別に。それよりなんかあったのか?」



コーヒーの紙カップ片手に片方の眉を上げて、ひと口含んだ羽村。

私の様子を察して、じっと見つめてくる。



「……婚約、したんだって」



そう言うと、口にしていたコーヒーを机に置き人差し指でこめかみを触った。



「ああー……。とうとう聞いたか」


「と、とうとうって羽村知ってたの?」



その言葉に驚いてテーブルに体を乗り出して聞いてみれば、以前安達からそれとなく聞いていたという。



「どうして教えてくれなかったの!?」


「俺が教えるより、自分の耳で聞いた方が結城は納得するだろ」


「そうだけど……」



だからといって、と問い詰めたところで羽村はなにも悪くない。

むしろ私に気を遣って黙っていてくれたんだろう。



それなのに、なんだか裏切られた気分になるのはどうしてだろう?

安達の婚約もショックだけど、なにも言ってくれなかった羽村にもなぜかショックを受けている。

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