第8話

ありがとうと微笑んで受け取った彼女の左手薬指には、小ぶりの宝石が乗った指輪がはめられていた。



ドクンと胸がざわつく。



息が止まりそうになるのを落ち着かせて呼吸を整えた。



「真嶋さん、それってもしかして?」



薬指を指さしてそう言うと彼女は恥ずかしそうに頷いた。



「はい、実は先日婚約したんです」



一瞬で目の前が真っ白になる。

いつか聞くかもしれないと思っていた言葉を聞いて、手が震えてくる。



分かっていたけれど、実際耳にすると衝撃が走る。



「そうなんだ。おめでとう! 安達もとうとうかぁ」



精一杯の笑顔で彼女におめでとうを言ってみたけれど、うまく笑えてるのかどうか分からない。

けれど真嶋さんははにかみながら指輪をはめた手を膝に置き、「ありがとうございます」と小さくお礼を述べた。



彼女のその姿がとても清楚で可憐に見えて、私には眩しくて思わず目を細めてしまった。

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