第6話

「ん」


「なに?」


「早く食え」


「自分で食べる」



一さじ掬ったアイスを目の前に差し出され、私は眉を寄せた。



「いいから食え」



ムスッとした顔でパクリと口にしてみた。

思った通りの甘さで、解けかけて液体に変わろうとしているものを口に含んでも、それほど冷たくもなくすぐに飲み込める。



そしてまた差し出される。



「自分で食べるって」



そう言っても口に寄せてくる。

何度目かの往復を繰り返し、惰性で口を開けて待っていた。すると目の前に来たスプーンは引き返し、なぜか羽村の口の中へ消えていった。



「ちょっ、何してんの!?」


「おまえ、俺をなんだと思ってんだ」


「……は? 羽村が食べさせてきたんじゃない」


「親鳥の餌を待つヒナか。甘えんな」


「ピヨピヨって――。そっちがしてきたんでしょ」


「あ、そっか。これがほんとの“ことり”ってやつだな。あははは」


「……バカじゃないの」



ほんとどうかしてる。

乗ってしまった私も私だけど、可笑しくもない羽村の笑いに目を細めてしまう。



でも、こうやっていつも茶化しては私の気持ちを立て直してくれる羽村には助けられている。

ありがたい同期だ。

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