第105話
カタカタと小刻みに揺れる身体を落ち着かせようと、腕を交差させて自分の身体を抱き寄せる。
けれど、大した効果を見せてはくれない。
「やだ…怖い…。」
口から漏れる弱り切った声。
何に対してこんなに怯えているのだろうか。
それは、ひー君に見捨てられる事に対してだ。
会いたい。
会って、優しくて温かいひー君に触れて、見捨てられないんだって実感したい。
「ひー君…ひー君……。」
ひー君からのお仕置きを思い出して恐怖と不安に呑み込まれているというのに、今は彼に安心感を求めて会いたいと思っているだなんて酷く矛盾しているなと思う。
でも仕方がない。
私は、恐怖も、不安も、安心も…全ての感情を、ひー君以外から与えられた事も教えられた事もないからだ。
それくらい、私の人生において、ひー君以外との人間関係は希薄な物だった。
「日鞠?」
廊下の隅で小さくなっていた私の耳を不意に突いた声に、下を向いていた顔が上がる。
視界が捉えたのは、少し先に佇んでいる彼の姿。
「日鞠、泣いてるの?」
そこには、会いたくて仕方のなかったひー君がいた。
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