第92話
私の唇を指の腹で押しながら、彼は続ける。
「甘い蜜のある薔薇には害虫が
それは、この間話していた、彼が育てている薔薇の話だろうか。
しぶとい害虫を駆除したと言う割には、汗ひとつかいておらず涼しい顔をしている。
「んぐっ…。」
美しい顔を見上げていると、突然ひー君の指が唇をこじ開けて口内に侵入してきた。
「んっ……んんっ…。」
「日鞠、どうして口を閉じようとするの?僕、こういう時はどうするって教えた?」
反射的に口を閉じようとした私を制するのは、冷たい声。
脳が指令を送るよりも先に、身体が彼の言葉に従う。
「そう、ちゃんと覚えてるじゃない。」
「んんっ…んっ…。」
口内を犯す指を受け入れる私に、彼の瞳は輝いている。
掻き回すように動いた後、舌の上にあった飴玉を摘まんで取り出した彼はそれをそのまま自分の口に放り込んだ。
「ほらね、僕の薔薇の蜜はとっても甘いの。」
彼がほくそ笑んで、私の耳元に言葉を落とす。
カラン
奪われた飴玉が、彼の口内で歯に当たって音を鳴らした。
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