第87話
嫌悪感。
影十の顔に映されるのはその感情のみだ。
「毎回、お姉ちゃんに知られないようにあいつは完璧に隠蔽するんだよ。」
「隠蔽って…。」
いかにもひー君が悪事を働いているような言い方だ。
「臭い物には蓋をする。あいつは絶対にお姉ちゃんに綺麗な部分しか見せない。」
「………。」
「あいつの毒が回っているお姉ちゃんは、きっと自分より僕があいつの事知っているんだって落ち込んでるんでしょう?」
私の心の中が見えているのだろうか。
見事に図星を突く相手に、私は気まずくなって目を逸らした。
「それは違うよお姉ちゃん。あいつは徹底的にお姉ちゃんに悟られないようにしている。だからお姉ちゃんは知らないだけ。」
「ひー君は…どうして私に悟られないようにしているのかな……。」
私の事は全て把握しているのに、自分の事は打ち明けてくれないなんて悲しい。
信用されていないのかな。
「僕がさっき言ったじゃない、あいつは臭い物には蓋をするって。」
「どういう意味?」
「そのまんまの意味だよ。あいつは、恐ろしく残虐な事をしているからお姉ちゃんに知られたくないんだよ。」
「ひー君が?」
まさか彼に限ってそんな事はありえない。
優しいひー君が残虐な行為をする所なんて、想像するのすら困難だ。
「そういう所だよ。」
「……。」
「お姉ちゃんは、綺麗な人の皮を被ったあの化け物の毒に冒されてる。」
私に向ける影十の目は、哀れんでいるようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます