第80話

身体が重たい。


それだけじゃなくて、腰だって悲鳴をあげてしまっている。




「………うっ…。」




誤って地面に落としてしまった消しゴムを取ろうとしただけで、痛みが走る。



朝から一向に良くなってくれないそれに、思わず涙が浮かんでしまいそうだ。



痛みの原因である昨日のひー君との情事を思い出して、今度は顔が熱くなる。


朝、起きた時に痛みで動けない私を彼は酷く心配していた。




「駄目だよ可愛い日鞠に無理なんてさせられない。学校なんて休めば良いよ。」


「で、でも、今日大切な発表があるから。」




身体に鞭を打って起き上がろうとする私をベッドへ引き摺り込むひー君に、どうにか説得を試みた。


大切な発表だなんて本当は建前で、彩愛ちゃんと会えないのは寂しいと思ったのが本心だった。




「日鞠は今日はずっと寝てて、僕も学校休むから。」


「そ、そんなの余計駄目だよ。ひー君が休むくらいなら私も行く。」




学校に欠席の連絡を入れようとする彼を慌てて阻止し、なんとか出席する方向にまで話を持って行くことに成功した。





「はい、袖に腕を通して。」


「うっ…恥ずかしいよひー君、それくらい自分でできるもん。」


「日鞠の世話は僕がするって約束でしょう?これを拒否するなら学校はお休みね。」


「……。」




満面の笑みで嬉しそうに私の着替えやら食事やらを世話していた彼は、酷く上機嫌だった。




そうして漸く学校に来られたというのに、残念な事に彩愛ちゃんは欠席だった。

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