第63話

「あのね、彩愛ちゃん…。」


「ん?」


「……ううん、何でもない。」




“彩愛ちゃんと夜紘君ってどういう関係なの?”




もう涙を浮かべる彩愛ちゃんを見たくないから、私は喉まで出かかった質問を呑み込んだ。





いつか聞ける日が来るのかな。



いつか私も、彩愛ちゃんと何の遠慮もなく話せる日が来るのかな。




……来ると良いなぁ。






千智君と夜紘君の関係みたいに。





「日鞠ちゃんは今日もひー君とご飯?」


「うん。」


「そっか、本当に仲良しだね。」




私はどうしてこんなに友達作りを焦っているのかな。


自分でも疑問に思う。


ひー君に隠してまで友達を作ろうとしている事に、私自身驚いている。





「うん、ひー君とはずっと一緒だから。」





自分の口から出た言葉に違和感を覚える。



『ずっと一緒。』



そんなの、口には出していても叶うはずがないって分かっているの。




ひー君は魅力的だから、きっと素敵なひとと恋に落ちて、愛し合って、結婚する。




そうなると、一緒になんていられない。私は独りぼっちになってしまう。



私はそんな未来が迫っている事に恐怖しているんだ。




いつかはひー君から離れなくちゃいけない。


そんな現実を考えると、目に見えない棘が心に突き刺さって痛みがじわりと広がった。

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