第62話

あの日を境に、千智君と夜紘君は毎日学校に姿を現すようになった。



朝からいたり。


午後の授業から来たり。


途中で帰ったり。




教室に来る時間も、滞在時間もまちまちだけれどそれでも毎日顔を見せている。




相変わらず二人は教室で浮いていて、異質な存在のように扱われている。



それでも常に堂々としている千智君と夜紘君は素敵だと思う。


いつも二人一緒で、会話が弾んでいる所はあまり見た事がないけれど、仲が良いのはこちらにも伝わってくる。


そんな友達関係に対して、私が密かに羨望の眼差しを向けている事はここだけの秘密。





「今日も夜紘来てくれるかなぁ。」




頬杖を突いて、幸せそうに頬を緩めている彩愛ちゃんの目は遠くを見ている。



きっと、ここにはいない夜紘君の事を想っているのだろう。



私の勘が正しいのなら、彩愛ちゃんは夜紘君の事が好きだ。


いつも頬を仄かに染めて、うっとりとした瞳で夜紘君の事を話題にあげる彩愛ちゃんは文字通り恋する乙女のようで、すっごく可愛い。





「来てくれると良いね。」


「うん。」




一週間前、彼等が初めてこの教室に現れたあの日、二人の彩愛ちゃんに対しての態度は冷淡そのものだった。



泣きそうな顔をしていた彩愛ちゃんを心配していたけれど、翌日には彩愛ちゃんはすっかりいつもの調子に戻っていて拍子抜けしたくらいだ。

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