第54話
彩愛ちゃんを少しも見ることなく、そのまま机に突っ伏した黒髪の彼。
何か言葉を掛けたいけれど、どういう言葉を掛けるのが正解なのか分からず戸惑ってしまう。
第一、私は二人の関係を何も知らないのだ。
「あの彩愛ちゃ……「……ごめんね、でもお願い私を見捨てないで夜紘……。」」
どうしてだろうか。
憤慨しても可笑しくないというのに、彩愛ちゃんは文句の一つや二つ言うどころか、縋るように泣きそうな声をあげるだけだった。
「………。」
それでも、反応を見せない彼。
彩愛ちゃんは、私が声を掛けるよりも先に苦しそうに笑みを落として自分の席へと戻ってしまった。
「全てがわざとらしくて演技臭いんだよね。」
ブロンド髪の彼は、心底興味のなさそうな顔で軟骨を飾るピアスを指先で弄っている。
誰に対して言っているのだろうか、そんな疑問を持たなくともこの状況下だとその言葉が向けられた相手くらいすぐに分かる。
「本当、面倒な女。」
私は彩愛ちゃんと彼等がどういう関係で繋がっているのか知らない。
けれど…彼等が彩愛ちゃんを嫌悪している。
それだけは、頭の回転が鈍い私でもはっきりと分かった。
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