第44話
お互いの肩が触れる距離に腰を下ろして、ひー君から手渡されたお弁当箱を開く。
彩りも鮮やかで、栄養も見事に計算されている中身はいつ見ても完璧だ。
「美味しい?」
「うん、すっごく。」
「ふふっ、味見させて。」
「えっ…んんっ……。」
横から伸びてきた手に顎を掴まれたかと思えば、すぐに唇を塞がれる。
状況を理解する間もなく、唇を割って侵入する彼の舌を、慣れたように身体がすんなりと受け入れた。
「ん、ちゃんと美味しくできてるね。」
最後に私の唇をぺろりと舐めたひー君の手には、私と全く同じ内容のお弁当が持たれている。
それもそのはず。
何故ならこのお弁当はひー君が作ってくれた物だから。
「もうひー君ってば、自分も同じ物なのに。」
「日鞠から味見しないと美味しくないんだよ。」
「ひー君の作った物は全部美味しいよ。」
「僕は日鞠が傍にいてくれないとご飯も美味しいって感じないの。」
僕が日鞠のお弁当は毎日作るから。
高校への入学が決まった日、ひー君は突然そう宣言した。
お弁当なんて負担だろうし、無理なんてして欲しくなくて断ったけれど断固として譲ってくれなかった彼は、本当に毎日お弁当を作ってくれている。
勉強もスポーツも得意なのに、お料理まで上手だなんて隙のないひー君は本当に凄い。
「ひー君、毎日のお弁当大変じゃない?無理しなくて良いよ?」
「どうして?全然苦じゃないよ。」
「それなら良いけど…。」
「僕以外の人間が作った得体の知れない食事を日鞠が食べる事の方が耐えられないよ。」
ひー君は、私に対して過保護な所があると思う。
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