第42話

美形で私とよく一緒にいる人。



彼氏という概念にさえ囚われなければ、あっという間に解けた謎だ。



だって、私にとってそういう存在はたった一人しかいないから。




「ひー君の事?」


「ひー君?」


「あ…名前は久遠氷雨で、私の幼馴染なの。」


「え!?そうだったの!?学校中の噂だよ、久遠氷雨君が格好良いって女の子達が騒いでた。」


「あはは、ひー君王子様みたいだもんね。」




噂になっていると言われてもつい納得できてしまう。


それくらい、ひー君は女の子の理想が詰め込まれたような人物だ。




今に始まったことじゃない。


保育園の頃から、ひー君は常に女の子からよく好意を寄せられていた。




「仲が良いからてっきり二人は付き合ってるのかと思っちゃったよ。」


「そんな事ないよ、ひー君はただの幼馴染なの。」


「ふーん、お似合いだと思ったのになぁ。」




お似合いなわけないよ。



声にならない返事が心の中で零される。




私みたいな人間が、完璧なひー君に釣り合うはずがない。


偶然、同じ病院で同じ日に生まれたから一緒にいる事が許されているような物だ。




ひー君にはそう、彩愛ちゃんみたいなお人形さんに似ている美少女がぴったりだと思う。




「でも可笑しいね。」


「何が?」


「私、意外とそういう観察眼は鋭い方だと思うんだけど…。」


「どういう事?」


「日鞠ちゃんのその幼馴染だよ。あの人、日鞠ちゃんの事しか見えてないような感じがする。それに…。」




“時々、あの人の瞳が怖いから”





彩愛ちゃんのその言葉の意味を、真意を、私は汲み取る事ができなかった。

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