第41話

英会話の課題も早々に終わってしまい、手持ち無沙汰になってしまった私と彩愛ちゃん。




「日鞠ちゃんって可愛いよね。」




唐突に、的外れな言葉を掛けて来た相手に私は吃驚した。




「そんなはずないよ。」



自分の容姿が劣っている事は誰よりも私がよく知っている。


私なんかよりも、彩愛ちゃんの方がよっぽど可愛くて美人だ。


比べるまでもないくらいに。




「え?」



私の返答に、驚いたような素振りを見せた彩愛ちゃんに首を傾げる。




「何言ってるの、日鞠ちゃんすっごく可愛いよ。皆が噂してるんだよ。」


「そんなはずないよ。」


「そんなはずあるの!」




にわかには信じられない話に、人違いなんじゃないかと思ってしまう。




「そういう彩愛ちゃんの方こそ何倍も可愛いよ。」


「私は…振り向いて欲しくて努力してるから…。」




消え入りそうな声でそう言った彩愛ちゃんは、ちらりと私の隣の空席に視線を投げた。




「でも全然相手にされてないんだぁ。」


「それってどういう意味…「そんな事より!!!日鞠ちゃんの彼氏、すっごく美形だよね。」」


「え!?彼氏!?!?」




質問を遮られ、話題ががらりと変わったかと思えば、全然身に覚えのない単語を言われて唖然とした。




「あれ、彼氏じゃないの?」




私の反応に違和感を覚えたのか、首を傾げて質問する彩愛ちゃん。



彼氏という存在なんて、生まれてこの方出来た記憶がない。


それどころか、果てしなく縁遠い所にある存在だ。




「いつも一緒にいる彼は誰?休み時間の度にここに来てるよね?」




誰の事を話しているのかまるでピンとこなかったけれど、彩愛ちゃんのこの一言で漸く答えに辿り着いた。

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