猛毒 二

致死率15%

第37話

新しい生活に慣れるのは、自分が思っているよりも気力や体力を要するみたいだ。




中学より明らかに遠くなった学校までの距離。


慣れない電車通学。


見知った顔ぶれのない教室。


進学校らしいレベルの高い授業内容。




全てががらりと変わった生活スタイル。


それに漸く身体が追い付くようになったと実感する頃には、既に入学から二週間が経過してしまっていた。





そんな中でも、唯一変わらない事がある。




「日鞠と離れたくない、好き。」




それは、私の隣にひー君がいるという事。




これだけは、生まれた時から一度たりとも変わった事のない私の生活の一部。




「ひー君、やだ擽ったいよ。」





誰も使われていない空き教室。


登校してからそれぞれのクラスに向かう前、ひー君は必ずここに一度私を連れて来るようになった。



腰に回された彼の長い腕。


第三釦まで外され露わになった私の肌に唇を寄せる彼は、至る所に散っている花びらをペロペロと猫のように舌で愛撫する。





「毎日毎日、精神的に可笑しくなる。日鞠がいないと生きていけないよ。」





鎖骨を甘噛みしては、私の肌に頬を摺り寄せるひー君に私は少し嬉しくなる。



ううん、本当はとっても嬉しい。





いつもは頼りになる優しい彼が、こうして私に甘えてくれる事が幸せだ。




ちゃんと、ひー君に必要とされているような気がして安心する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る